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流許(ながしもと)に主婦(かみさん)、暗い洋燈(ランプ)の下で、かちや/\と皿小鉢を鳴らして居たが、其と見て少年の側へ駈寄つた。二十年来慣れたことすら出来ないものを、是から新規に何が出来よう。承知して居ながら、其が我輩には出来ないから情ない。 あゝ、生きて、働いて、仆(たふ)れるまで鞭撻(むちう)たれるのは、馬車馬の末路だ--丁度我輩は其馬車馬さ。 だつて君、左様(さう)ぢやないか、尋常科の教員なぞと言ふものは、学問のある労働者も同じことぢやないか。羽織袴(はおりはかま)で、唯月給を貰ふ為に、働いて居るとしか思はなかつた。 そりやあ我輩だつて、もう六ヶ月踏堪(ふみこた)へさへすれば、仮令(たとへ)僅少(わづか)でも恩給の下(さが)る位は承知して居るさ。