“ 持主に導かれて、二人は黒い門を入つた。幸ひ案じた程でも無いらしいので、漸(やつ)と安心して、それから二人は他の談話(はなし)の仲間に入つた。鋭い目付の犬は五六匹門外に集つて来て、頻(しきり)に二人の臭気(にほひ)を嗅いで見たり、低声に㗅(うな)つたりして、やゝともすれば吠(ほ)え懸りさうな気勢(けはひ)を示すのであつた。 その日の運勢や、方角による吉凶を表す「六曜」のひとつ。中には下層の新平民に克(よ)くある愚鈍な目付を為乍(しなが)ら是方(こちら)を振返るもあり、中には畏縮(いぢけ)た、兢々(おづ/\)とした様子して盗むやうに客を眺めるもある。普通列車などが優等列車を通過待ちするときは、停車中の列車乗務員は必ずホームに立ち通過監視を行う。 ”