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それに指輪は二つまで嵌(は)めて、いづれも純金の色に光り輝いた。斯(か)ういふ挨拶を蔵裏の下座敷で取交して、やがて丑松は二階の部屋の方へ客を導いて行つた。 』と斯う丑松は心に繰返して、対手の暗い秘密を自分の身に思比べた時は、長く目と目を見合せることも出来ない位。丑松はすこしも油断することが出来なかつた。 』と丑松は快濶(くわいくわつ)らしく、『どうも失礼しました。 『昨日(さくじつ)は舟の中で御一緒に成ました時に、何とか御挨拶を申上げようか、申上げなければ済まないが、と斯(か)う存じましたのですが、あんな処で御挨拶しますのも反(かへ)つて失礼と存じまして--御見懸け申し乍ら、つい御無礼を。