“ こうした章立ては、本書が筆者の憲法学の体系的理解とは無関係の、あくまで法科大学院等での学習教材として編まれていることを形をもって示すとともに、一章ずつが読み切りのものとして書かれていることをも意味している。 むしろ、筆者は判例の論証の流れに自ら入り込み、多数意見やそれと同等に重視された個別意見の裁判官と相まみえ、もっぱら論理的に刃を交わす。判例を読み直すことによって、これまであまり問題にされてこなかった論点に気づくということがあるかもしれないし、従来当然とされてきた理解とは異なる理解に到達するということがあるかもしれない。 「読み直し」は筆者自身の思い込みを改めるだけの営みではもちろんなく、むしろ学界に共有されている判例の位置づけに異を唱えるというチャレンジを意味する。 ”