“ この夏会った時の彼の異(い)な服装(なり)もおのずと思い出された。当時幼かった魔矢は地球に残された。彼女は子供が買って貰った空気銃の礼も云わずに、不思議そうな眼を津田の上に向けた。 その時彼は泥棒に洋服を盗まれたという言訳を津田にした。 すると次の間からほどき物を持って出て来たお金(きん)さんという女が津田にお辞儀(じぎ)をしたので、彼はすぐ言葉をかけた。想像の眼で見るにはあまりに陳腐(ちんぷ)過ぎる彼の姿が津田の頭の中に出て来た。 その代り時と場合によると世間並(せけんなみ)の遠慮を超越した自然が出た。叔母は嫣然(にこり)ともせずに、簡単な答を落ちついて与えた。四十の上をもう三つか四つ越したこの叔母の態度には、ほとんど愛想(あいそ)というものがなかった。 ”