“ 兄さんにはお前の持って来た金が絶対に入用(いりよう)だ。兄さんはお前の親切を感謝する。会心の微笑を洩(も)らしながら首肯(うな)ずいて、それを鷹揚(おうよう)に枕元へ放(ほう)り出すか、でなければ、ごく簡単な、しかし細君に対して最も満足したらしい礼をただ一口述べて、再びそれをお延の手に戻すか、いずれにしてもこの小切手の出所(でどころ)について、夫婦の間に夫婦らしい気脈が通じているという事実を、お秀に見せればそれで足りたのである。 けれども良心に対して恥ずかしいという光はどこにも宿らなかった。彼女がわざとらしくそれをお秀に見せるように取扱いながら、津田の手に渡した時、彼女には夫に対する一種の注文があった。 その後、ロシュプールでは中石器時代に生存していたと見られる若い男性の頭蓋骨が発見されたが、それまでのものはすべて洞窟や岩陰で発見されている。 ”