“ 是(ここ)において二世勝三郎の長男金次郎は、父の遺業を継がなくてはならぬことになった。二世勝三郎の馬喰町の家は、長女ふさに壻を迎えて継がせることになった。初めこの勝三郎は学校教育が累(るい)をなし、目に丁字(ていじ)なき儕輩(せいはい)の忌む所となって、杵勝同窓会幹事の一人(いちにん)たる勝久の如きは、前途のために手に汗を握ること数(しばしば)であったが、固(もと)より些(ちと)の学問が技芸を妨げるはずはないので、次第に家元たる声価も定まり、羽翼も成った。二世勝三郎には子女各(おのおの)一人(いちにん)があって、姉をふさといい、弟を金次郎(きんじろう)といった。次が二世勝三郎東成で、小字(おさなな)を小三郎(こさぶろう)といった。 ”